園長コラム 子ども自身で決めることを大切にする

 日々生活する中で、良かれと思って保護者の方が子どもに代わって決めてあげるということを習慣的にしていませんか。前回のブログでご紹介いたしました、太陽幼稚園の子ども達は「今日は幼稚園で何をして遊ぼうかな」と、子どもが考えて決めます。進んで遊ぶ子は何をしたいか、誰と遊びたいか等が明確です。

逆に何もしない子。さて、どうしましょう。私達大人はなんとか楽しませてあげたいと思うので、頼まれてもいないのに色々な言葉をかけます。「何をしたい?ブロックする?ここに机を持ってきて絵を描く?それとも散歩に行く?」何もしていない、つまらなそうだから、なんとかしてあげよう。この子ならこの遊びが適しているかも・・・。これは幼児教育において非常に多い対応ですが、実は子どもの育ちの妨げになっていることが多いのです。何かをしなくていいのです。子どもは一人になりたい時があったり、どうしようかな、と考えている時もあります。友だちの遊ぶところを見ている時もあります。子ども自ら動き出すまで待つ姿勢が必要ではないでしょうか。「待てる大人」が側にいると、子どもは安心して動き出します。(何日もかかる時もあります。)

 例えば、「ここに赤、黄、緑、白、青、金色の折り紙があるけど、何色を使いたい?」そこから選んで子どもが決めます。“選ぶ”のも子どもです。また、ヤダ!って言っても聞いてくれない。ワァ〜ン!泣いても分かってくれない。ひっくり返って暴れて物を投げても、叱られるだけ。子どもの出す信号に気づき、何に困り、どうしたいのかを大騒ぎしてひっくり返る前に、言葉で出している時に受け止めたいのです。自分の気持ちを外に出して表現して良いんだ!という心を育てたいと思っています。

「教育発表会」という行事があります。教育発表会は大きな舞台で各学年の育ちに合わせた発表をしています。取り組む中で、私達が最も大切にしているのは、劇(4歳児)や楽器(5歳児)の役決めです。一つの目標に向かって、仲間と作っていくプロセスを重視しています。入り口にある大切な役決めは、誰かが決めるのではなく、自分です。自分がどうしたいのかです。

年長児はたった一つしかない楽器に、複数希望者が集まると話し合いをします。皆の前でプレゼンです。なぜ、こんなにこの楽器をしたいのか、じっと仲間の気持ちに耳を傾けます。話し合いの中で自分自身を見つめます。“だってこの楽器を弾きたい”“年少の時からしたかった”“でも○○ちゃんの気持ちも分かる”“この間、スポーツデーで自分がしたいようにさせてもらったから、今度は○○ちゃんの番でも良いかな”“いつも良いよって言う○○くんが良いよって言わないの初めて聞いたし”“でも、お母さんがその楽器を諦めないでって言ってたし”

友達の気持ちを聞くと、揺らぐ子。いや、絶対したい!と譲らない子。大太鼓を巡って、6人の思いがぶつかりました。お互いの気持ちを知っていく中で最後は2人に。姉妹園に借りると言いテレビ電話で交渉。しかし、「私たちも同じ様に毎日使うから貸せない」と言われました。2人の結論は、交代で打つことになりました。あの時の2人の達成感を味わった顔は今でも忘れられません。

ここまで決める、にこだわる理由は何でしょう。大人の都合に従っていたら、誰かが提案するまで待つ子になるでしょう。太陽の子は、大人の提案にまず従いません。(良い意味でですよ)自分がしっかりあります。この柱を育てたいと思います。

自分で考えて行動できる子になるには、人の指示に従うのではなく、自分がこうだと思うことをしてみる。失敗したらそれだけ大きな宝物を獲得する。大人も支える。また歩き出す。この繰り返しだと思います。

見栄えのある劇発表をする。迫力のある合奏を発表することもあっては良いかとは思いますが、劇や合奏を通して、見えない心を育てるのが太陽の教育です。一人では学べない力を仲間がいたから自分も育てられた。こんな力が達成感や自信に繋がるのではないでしょうか。

園長コラム 自分でつくる幼稚園生活

 太陽幼稚園の一日は「さて、今日は何をして遊ぼうか」から始まります。「自分のしたい遊びを存分にする」ということを大切にしています。三十人いれば、三十通りの意見が出ます。

 こんな時がありました。「みんなの家族が幼稚園に来る日があるけど、皆はお家の人と何をして遊びたい?」と聞くと、外で遊びたい、ドッジボールをしたい、おままごとをしたい、縄跳びをするのを見てほしい、お化け屋敷を作って驚かせたい、アイスクリームを一緒に作って一緒に食べたい・・・様々です。このように意見を交わす中で、皆気持ちが違うんだ。考えていることが違うんだということを知ります。「皆それぞれ違う」ということが重要です。

 逆に大人が決めたことに子どもが従う。大人が主体だとどのようになるでしょう。「今日はこんなことをします」「ハーイ」子どもが大人の意見に従うことに慣れていると両者共に楽です。反発もせず人の意見も聞かず、他者の違いにも気がつかず、困っている人の存在も知らないでしょう。レールの上を歩けば失敗もせず考えることもしなくていいからです。 

 ある日、第一幼稚園の年長の子が一つの段ボールを見つけ、ガチャガチャの販売機を作りました。プラスチックの丸い容器がコロコロ転がって出てくるので、大人気になりました。と、次は自動販売機を作ろうとなり、段ボールに仮名で「じどうぱんばいき」と誤って書きました。「おもしろいから、パン売機にしよう」となり、お金を入れ「フランスパン、あんパン、ピザ」等、指名をするとパンがゴロゴロ出てくる自動パン売機がまたもや大人気に。年少、年中児はもとより、第二幼稚園の子も招待しました。

 というように、自分がしたい遊びをする。自分がしたいからする。が太陽の基本です。子どもが主体になり、したい遊びの援助を大人がします。気がつくと興味を持った子がゾロゾロと仲間になり、同じ目的を持って、ああでもない、こうでもないと相談し合い、次の日も次の日も遊びが続きます。

 園生活は子どもの手と頭と心を使って作ります。前述したように、大人がレールを引きその上を歩くのは簡単です。なぜなら考えずについていけばいいからです。

 小さい時から健全な心を育てたいと考えています。自分は今、何をしたいのか、遊びたいのか休んでいたいのか、何もしないで友達の遊ぶのを見ていたら誘われた、一人ではできなかったけれど仲間が声をかけてくれたから、してみようかな、楽しい!心が動くのを待ちます。急がなくていいのです。

 「したいことをする」という時に大切なのは瞬間です。子どもの気持ちが動いた時に大人は一緒にする、というのが太陽のスタンスです。待たせない、ということです。担任はもちろん、フリーの教員、職員室にいる総務、体育講師、副園長、園長は子ども最優先です。様々な事柄をやりくりし、子どもの「したい」につき合います。この子ども達の、こうして、ああして、の要望をその瞬間で叶え、人と人との信頼関係を作るのが私たちの子育て、使命です。

 次回は「決める」ということについてお話しいたします。